こんにちは。小松さん。今日は相談があってきました。
こんにちは。どうしましたか。
いじめのアンケートが大量にあって、全部捨てたいと思っています。でも、捨てるなと言われてどうすればいいか困っています。確かに大事な資料なのはわかっているのですが、保管する場所がありません。卒業後何年まで保管していた方がよろしいでしょうか。
はい、それらは勝手に捨てない方が良いです。20年間は保管していた方が良いと思われます。解説しますね。
20年間もなんですね。よろしくお願いします。
今日は、学校におけるアンケートの処理。一度とって対応したアンケートは「指導済み」など朱印をして、学年末に捨てているものが多いのでは無いでしょうか。
しかし、時代は変わってきました。これからは訴訟の時代に入ります。だれが、いつ、どんな事情で訴訟し、そして自身や同僚を守れるかどうかがわかりません。そんなときに、自分達を守ることができるのは、アンケート等の資料です。
学校には、いじめや事故など様々あります。懸命に子どもたちや地域の方々のために働いたのにも関わらず、訴訟され過失があったなど言われたらもったいありません。次のことを知っておきましょう。
法的根拠
民法が、2020年4月1日に改正施行されました。それには、以下のように記されています。
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
改正民法724条
724条には、3年と記されていますが、改正民法では、724条の2項が加わりました。
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるものは、「五年間」とする。
つまり、いじめを知った時から5年以内、かつ起こったときから20年以内でしたら、学校に問題があったら損害賠償を受ける可能性があります。
当然、当時の校長や市町村、都道府県は責任をとる必要があります。
極端に言えば、17年目にトラブルの対応を学校がしていないと保護者が知って、調べて、20年目に損害賠償訴訟をする可能性があります。同窓会などで「そういえば…」と言ったことから、そのような訴訟になる可能性があります。
後日、勝手につくられた事実がないように、しっかりと証拠資料は残しておきましょう。
期限まで保管が必要か
必要です。理由は2つあります。
事実をねじ曲げられる
事実を捏造し、過去にこんなことがあったと嘘をつき、学校を相手取り訴訟に踏み切るケースがあります。
人間は過去を美化したがるものなので、誇張したり事実では無いことを言い始めたりします。全くもって迷惑な話なのですが、そういう人もいると知っておかないといけません。
いえむしろ、人間とは過去を美化したり、自分を悲劇のヒロインとしたがるものなので、全員に注意が必要です。
実際に私は不登校になった原因は担任の暴言にあると言われたことがあります。事実の無いことを周囲の保護者にたくさん言われてしまいました。他の子のアンケートには真逆のことが書いてありましたので、周りに守られた形になります…。
家族が調査する
成人になったときに、家族が気になったことを調査することがあります。そしたら、
「あのときやっぱりそんなことがあったのね。」
「知らなかった…。調べないといけない。」
と調査を始めます。
そんなときに担任はうろ覚えで対応するしかないので、資料が無いと話が進みません。
資料がありさえすれば、本人のアンケートに何も書かれていないと証明できます。
どうしても子どもと言うのは大人が良い反応をするように話をしてしまうものらしいです。
そういえば、あのときいじめられてたな…
なんでそのとき言わなかったの?担任の先生は?学校でアンケートなかったの?
アンケートに書いていたんだけれど無視された…。担任みんな嫌ってたし。
なんですって?知らなかった!
心配させると思ったんだもん。
このように、時間差があるのは、家族が後に聞いた情報により行動する場合があります。
家族も時間が経ち、考え方や精神状態が変化してしまいますので、どうなっても良いように対応できるようにしていかなければなりません。
また、この条文を知っている人は、いやな子や担任に仕返しをするため、あえて親に伝えて行動させるパターンも考えられます。
その時には、事実と事実ではないものを織り交ぜて話し、自身を優位に話をすすめると考えられます。
つまり、親や近親者は知らなかったで済むので、20年間は損害賠償の責任を受け続けます。
学校の先生でしたら容易に想像がつきますよね。日常茶飯事ですから。
他にも何か保管した方が良いもの
ここまで言われたら不安です。他に何か保管しておいた方が良いものはありますか。
次のものは保管しておきましょう。
学校備付表簿
これは言うまでもないですが、教育基本法で定められているように、保管が必要です。学籍・指導・健康に関する記録は、様式1、2共に残しましょう。
どうしても申し送りたいことがあったら、ここに入れ込んでおくと良いですよ。。
生徒指導・保護者対応記録
生徒指導記録などは残しておきましょう。
・日付、時刻、場所
・内容 だれがどうした
・解決に至った方法 親への連絡はどこまでしたか
事実を捻じ曲げられる可能性がありますし、十数年前のことなどは覚えていないことが考えられます。日頃から生徒指導をするときには、記録ノートをつくり記録しておきましょう。
担任が替わった間をつかれるのが一番痛いですね。心配なケースは必ず細かく申し送りをしたいですね。
実は、学校で起きたトラブルでは、担任が当時とったメモなども重要な証拠資料になることがあります。
よくある保護者を巻き込んだ子ども間のトラブルも、そのメモが証拠となり、判決をくだされます。
もし、メモ等を取っていた場合は、保管しておくことをおすすめします。
アンケート
前述の通り、アンケート記録は重要です。過去はいくらでも未来で書き換えられてしまいますので、いいように言われないようにした方が良いです。
また、学校を楽しんでいるような学期末アンケートのようなものも念のためとっておいた方が良いです。何より自身を守る資料を一つでも多くもっておきましょう。
・いじめアンケート ・学期末アンケート
保管方法
保管方法は、デジタルと紙両方で保管しましょう。
4年生以上の学年は、電子アンケートで十分なので、そのまま保管できるでしょう。
紙のアンケートは、スキャンし、外付けハードディスクやCD⁻ROMに保管しておくと良いです。
ただし、データやハードディスクというのは、壊れるものなので、バックアップや現物保管もしておくと良いです。
まとめ
まとめます。
・人の生命又は身体を害する損害賠償責任は、知ってから5年以内、かつ事故等発生から20年以内。
・将来、事実を捻じ曲げられて話される可能性を考慮しておく。
・いじめアンケートの他に、生徒指導・保護者対応記録・学期末アンケートも保管しておく。
何が起こるかわかるかわからない学校現場です。少しの手間で多くの人を助けることができます。しっかり保管しておきましょう。それでは。