小学校体育科「持久走大会に向けて」の指導方法
持久走大会があると聞いて、子どもたちから「したくない!」と言われました。たしかにきついから気持ちはわかります。どうしたらよいでしょうか。
たしかに、持久走はきついですね。でもきついだけではないよということを伝えていくと少し見方が変わっていくかもしれませんね。それだけでは、難しいときもありますが、まずはそこから始めましょう。
お願いします。
今回は、持久走の指導方法についてです。持久走と聞いて、喜ぶ子と嫌がる子が目に浮かびものですね。
持久走を好きな子は、どんどん走りますので問題ありません。
しかし、全員がそのように走れるわけではありませんよね。
今回は、そのような持久走が苦手な子をより活動的になれるような流れを考察してみました。
先生方の指導の役に立てられると嬉しいです。
持久走の指導の流れとねらい
持久走指導の流れ
早速ですが、持久走の単元指導は次のようにします。
・持久走大会について知る。
・持久走の良さを知る。
・個人の目標を立てる(競技志向か、健康志向か)
・持久走を行い、持久走の良さを実感する。
・単元を振り返り、自己の目標に対する取り組みについて考えさせる。
持久走のねらい
持久走は、主に健康状態をよくするために、一生続けていけるようにするのがねらいです。
ただ、「持久走大会をして終わり」では、意味がありません。
先日、某SNSで、日本の持久走大会の様子をみて、北欧の教育学者が、「とても残念だ。これでは、運動嫌いの子供が増えてしまう。」とおっしゃっていたのが、印象的です。
あくまで、狙っているのは、健康的な運動習慣。昭和や平成の競い合い合戦では、子どもの心はもたなくなってしまっています。
日本は生活習慣病で亡くなる人が多いです。持久走やウォーキングをすることで、生活習慣病を予防するというのは、幸せに生きる上で大切なことです。
持久走って、なんかきつそうなイメージがあるけど、健康に生きていく上で大事なんだな。
と子供たちが思うことが大切です。
持久走の良さを知る
私が、持久走の良さを簡単に並べるだけでも、10個は出てきました。これを子供たちに見せるだけでも効果はあるでしょう。
持久走など続けて長く走るスポーツは、冷えた体を温めたり、走った後の爽快感があったりと実感できるメリットが多いです。
また、目標を達成する楽しさや、競技感覚で楽しむこともできるでしょう。
それぞれの目標に向かいながら、良さを実感してもらえると良いですね。
高学年の女の子には、意外とダイエット効果と肌の余分なものを出すことができると伝えると結構ひびくようです。一生懸命やるのが嫌な子達が少しでも前向きになれると良いですね。
個人の目標を立てる
持久走を指導するにあたって、確認しておきたいことは、学校の先生のねらいです。
この持久走の取り組みが、「競技スポーツ」なのか、「健康スポーツ」なのかをはっきりさせないといけません。
ひと昔前までは、「競技スポーツ」一択で、「より速く」、「より長く」、「より高い順位に」目標を高く掲げて走れ…
…でしたが、今の時代では、少し合っていないように感じます。
「より速く」ゴールまでたどり着くことを目標にする子がいても良いです。また、「完走」を目標にする子がいても良いと感じます。
自分の課題に合った目標を立てさせ、それを目指す単元構成を設けて、達成できるように支援していくことが理想です。
ただ競い合わせて、最後のかわいそうな子をみんなで応援するような持久走大会は、運動嫌いを生み出す学習になってしまっていないかをみてください。
単元の中で実践する
実際に、授業の中や活動時間で持久走を実践していきます。
毎時間、自身のめあてを立てさせ、毎回振り返りをさせてください。
今日は、1回も止まらずに走る。
今日は、。7分30秒でゴールしようかな。
単元をふり返る
最後に、振り返りをさせて、持久走の良さの実感できたことや、目標に向けてどのように取り組んだのかを振り返りをさせましょう。
先生方の意識次第で、子どもたちの持久走の取り組みを意味のあるものにしてくださいね。
終わった後は、なんでも「よくがんばったね!」と心の底から言ってあげてください。
持久走の指導の方法
・目に見えて、走っている実感をもてるようにする。
・呼吸を整える。
・走っているときに音楽を流す。
目に見えて、走った記録が残せるように、下のような記録用紙があると良いです。1周ごとに色を塗るなどをし、目標の数に達成できるようにしていきたいです。
この記録用紙は、説明するためにつくったものなので、ご自身で作成されるか、インターネット等で調べてよいものを使用してください。
多くの人がいると、より走ろうという気持ちになります。先生も子どもたちも一緒にみんなで走っていく雰囲気を設けましょう。
呼吸方法を指導することも大切です。持久走とは、筋肉で使われる酸素を呼吸で補うことで、続けて長く走ることができます。
「息を2回吸って、1回吐く」方法や、「息を2回吸って、2回吐く」方法などは、プロでも用いられています。
これを肺だけで行うだけでなく、腹筋を使ってすることで、より短い時間で多くの酸素を取り入れることができます。
教室の中で、一度椅子に座ってお腹が動いているか確認しながらしていきたいですね。
また、子供たちの好きな音楽を流すことで、より気持ちよく運動ができます。流行りの曲を流してあげてください。
注意すること
・体育の時間でする場合
・安全性の確保
・下位層児童の配慮
体育の時間で実施する場合
体育の学習時間で持久走をする場合、合わせ単元ですることをおすすめします。
例えば、高学年で「サッカーの前に、持久走を2周走ることで寒さをしのぐ。」
低学年で「鉄棒の前に、歩いてはいけない鬼ごっこ」をするなどです。
そのようにして、「持久走は体が温まっていいな。」、「持久走ってこんなこともできるんだ。」と楽しくするのも手ですね。
ちなみに当たり前ですが、時給走を45分間続ける授業というのは存在しません。
安全性の確保について
まず、持久走練習期間以前に保護者から同意書をもらっておきましょう。
「嫌がっているのに無理強いされた。」となれば、後にトラブルに発展します。あくまで、健康のためにしているので、保護者の同意が無ければしなくて良いのです。
事前の健康チェックは必ずしましょう。健康観察において、少しでも体調が悪かったり、寝不足できつそうであったりする子は、持久走は控えさせましょう。
準備運動とクールダウンは必ず必要です。準備運動をして軽く体を温めておくと、運動時に怪我をしにくくなります。
また、急に持久走をやめてしまうと、心臓に負担が行きますので、5分程度歩くなど呼吸と心拍を緩めてあるげる必要があります。
緊急時にすぐに動けるように、連絡態勢をしっかりとります。
「心肺蘇生」「児童誘導」「救急車連絡」「AED」「職員室連絡」。
少なくとも、これらは、必ず用意しておいて、有事の際にすぐに動けるようにされてください。
持久走コースの安全性は前提条件です。これらの、ことをしていないと、子どもが重篤障害をもったり、亡くなったりしたら裁判で負けます。予見ができることは、必ず事前に確認しておきたいです。
持久走が苦手な子どもの配慮
運動が苦手な子どもについての配慮は重要です。
最後に応援されてゴールする感動的なイメージがあります。
その一方で、それを嫌がる高学年の女の子もいるわけです。ゴールしたら、下位の子達のプライドを傷つけないようにする工夫が必要です。
例えば、終わった人は、「コースと違うところを歩いておく」、「走り終わってある程度歩いたら、特定の場所でストレッチをしておく。」ということなどです。
このように決まり事を設けることで、下位層の子どもが一生懸命に走る環境を整えてあげたいです。
まとめ
今回は、持久走の指導方法でした。
<学習の流れ>
- 単元の前に、持久走の良さを伝える。持久走大会があることを知る。
- 自身の持久走の目的と目標を決めさせる。
- 持久走を行い、楽しさや良さを実感する。
- 持久走を振り返り、持久走の良さや、目標に向かって努力する自分を自覚する。
<留意点>
- 呼吸法の指導が必要。
- 持久走カードを使って、目に見える達成感を得させる。
- 安全面に気を付ける。
- 下位層の児童に配慮する。
全国の子供たちが、持久走を好きになってくれる。または、意味のある活動だと思ってくれると良いですね。それでは。