学期末の子ども達への通知表なんですが、所見のところが訂正で真っ赤になって返ってきてしまいます。何か対策はないでしょうか。
そうですね。管理職の方針にもよると思いますが、ある程度書き方を学んだら、言われることは誤字・脱字程度になると思いますよ。いつもどんなことを書かれているのですか?
一人一人のがんばっていることを学期末に思い出して、枠いっぱいに書いてたくさん励ましています。教頭先生や校長先生に添削されるとその大事なところがたくさん削られるんです。たくさん時間をかけて書いたのに…。
なるほどですね。それはもう少し肩の力を抜いて、所見の書き方を学ばないといけませんね。解説します。
今回は、通知表所見の書き方です。通知表の所見欄が管理職から赤いっぱいに染められて困っていませんか。
また、我流が進んでしまって、客観性のない所見を書いてしまっている方もいることでしょう。
今回は、そのような課題に解決できるように、改めて基礎的なことを学べるようにまとめています。
通知表の書き方
所見の書き方は「事実」+「評価」が基本
まず、構成は次のように書きます。
「事実」+「評価」(+展望)
「事実」というのは、客観的に評価できる証拠です。
例えば、体育科「走り高跳び」で、110㎝の高さを跳べたら、「110㎝の高さを跳んだ」という事実ができます。
「110cmを跳ぶ」ということが評価として高い評価ならば、「110㎝の高さを跳んだ」(事実)ので、「高い技能がある」(評価)ということができます。
一方、体育科「走り高跳び」で「とても高く跳んだ」という事実では、実際に何㎝跳んだのかわからず、評価になりません。
実際には、助走や跳び方、跳んだ高さ、着地の仕方を技能面では評価しますが、今回はテーマでは無いので割愛します。
このように、「評価」ができるように客観的証拠があるものを「事実」として考えられます。
5年生の算数科で例を挙げます。
算数科「図形の面積」の学習では、複雑な図形の形でも四角形や三角形の求め方を使って答えを求め、友達から賞賛されました。既習学習を使って新しい問題に取り組む意欲に感心しました。
上記のように、始まりは、「教科」「単元名」で始まり、「複雑な図形の形でも四角形や三角形の求め方を使って答えを求め、友達から賞賛」されたという「事実」。
次に、「既習学習を使って新しい問題に取り組む意欲」が高かったという「評価」を書きます。
文はあまり気にしないでください。パッっと思いついたのがこの文章なので、良い文があったら書き換えます。
教科・領域等の所見を書く場合は、
「教科(領域)」「単元名」「事実」「評価」(「展望」)
事実のときに、気を付けなければならないことは、「たくさん○○をしました。」のように具体性が薄まることがいけません。
できれば、数値や具体的な姿をイメージできるとよいです。
具体的すぎると評価が狭まってしまうので、相手にどう受け取られるかを考えながら書くことが大事になってきます。
「事実」と「評価」に「展望」も
それでは、先ほどから出ている「展望」を記述するのはどのようなときでしょう。次の所見をご覧ください。
6年生を送る会の準備では、実行委員長として、在校生代表の言葉を考えたり、6年生が心に残るようにありがとうで体育館をいっぱいにする計画を提案したりして、全校児童をまとめました。
全体をまとめるリーダー性が育っているので、来年度のさらなる活躍を期待しています。
「6年生を送る会の準備では、実行委員長として、在校生代表の言葉を考えたり、6年生が心に残るようにサプライズ計画を提案したりして、全校児童をまとめました。」という「事実」がきます。
「全体をまとめるリーダー性が育っています」という「評価」に加え、「来年度のさらなる活躍を期待しています。」という「展望(期待)」を加えました。
このことにより、子どもは、「来年もがんばろう。」「先生は自分のことをよく思っているな。」と思います。
この「展望(期待)」は、子どもへの関係づくりのためにも、評価の効果をあげるためにも入れたほうが良いです。
しかし、書き過ぎると口説いので、1回の所見で1回限りが望ましいです。
子ども心にそれは、「定型文を使っているのか…」と思われてもおかしくはありません。
「本当にほめたい。」「来年度も伸ばしてほしい。」というところで使うのが望ましいでしょう。
私は、結構リーダー性か思いやりのある姿で使っていました。子どもの気持ちになったらやはりそこをほめられたら嬉しいでしょうから。
あとは組み合わせる
所見の内容は上のように様々です。何による違いかというと、都道府県や市町村ごとに形式が異なります。書き方は、数年に一度変更します。
手書きの時代は自分で感覚でわかるので何でもよかったのですが、パソコンによる文字入力で見やすい大きさというのはそれぞれ異なります。一度印字して読みやすい字で調整して確認しましょう。
「全体を総括」とは、その学期においてその子が特筆するべきところを載せます。
例えば、「○○さんにとってのリーダー性が伸びる2学期でした。」「休み時間は友達に囲まれ、○○さんの周りは笑顔が絶えませんでした。」などです。
熱量をもっと込めなくて良いか
書き方はわかりました。ですが、この書き方では、私の想いが届かないですし、子ども達も感動しないのではないでしょうか。もう少し熱量を込めて書きたいと思うのですが…。
それは、ここでは求めすぎているかもしれませんね。子ども達への想いは、別に手紙などで渡すか、ノートに書き込む等別の形の方が適切かと思われます。
これは、あくまでも通知表の所見項目ということを考えて頂きたいと思います。
成績という客観性のある情報をもとに特筆するべき点を述べるものです。
担任がだれであっても、本来ならば同じ内容が書かれていることが重要になります。本人がその学期の学習や学校生活において、努力したことや高い到達度に達したものを中心に書くことが基本です。
より気持ちを込めて書きたい。もしくは、自由に書きたいという方は、手紙や学級通信等で伝えるとよいでしょう。
所見に書く材料
書き方はわかってきました。でも所見に書くものがありません。すごく手がかかる子や優秀な子はたくさん書くことがあるのですが、中間層の子は何を書けばよいですか。
そうですね。それは厳しいですね。次からで良いので、予め書きやすいところをピックアップしておいてくださいね。
所見を書きやすいところ
所見を短い期間で書き終わるためには、予め、所見に書きやすそうなところをピックアップしておくことが大事です。
所見に書きやすいところとは、個人の努力や工夫が出やすいところです。
さらに所見へのヒントを得るには
また、コツとして、学期末に「この学期でよくがんばっていたと思う友達」を書かせます。
そこに書いている子どもを参考にしたり、友達から称賛されていたということで所見を書いたりすることがあります。
名簿を使うときもありますし、「あ、いいな。」と思ったことを箇条書きでつらつら書くことがありあます。座席表が書きやすいときもあります。評価用に特殊な名簿を使うことがあります。時間があるときに紹介します。
注意すること
次の言葉は注意しましょう。
・誇張表現を使用しない。
・欲張らない。
・事実がねじれているものは書かない。
・複数ある項目の語尾を同じにしない。
・「できました」「しました」の違い。
・マイナス面は書かない。
誇張表現を使用しない。
これらの表現は、客観性に基づくものではないので、使わないようにしましょう。
「かなり技能が高い」と、「技能が高い」の違いは何でしょうか。
かなりというのは、教師による主観に基づいていて、A先生は「かなり」をつけて、B先生は「かなり」をつけない。
そうなってくると、先生によって評価が変わってしまうということになってしまいます。
そうならないように書くなら、「10ページにもなりました。」「110cm跳びました」のように数値が伝わるようにすると良いですね。
こういうところが、指導を受けてしまうところです。何十回も所見を書いている管理職の先生方から指導を受けるのは、客観的な事実が主観的な文によって信ぴょう性のないものになってしまっているところです。
欲張らない
先程の、算数の評価の例を使ってします。
このように、評価をたくさんしてしまうと、事実と評価が1対1ではなく、とらえにくくなってしまいます。
また、文が長くなることで、意味が変わってきたり、読み手の想像で解釈しなければならないことが出てきます。
文は短めにしておきましょう。
事実がねじれているものは書かない
これは、よくあることですが、所見でたくさんほめているのにも関わらず、成績では二段階目の評価ということが起こりがちです。
先生方の事情もよくわかります。体育科でサッカーをしていて、とても輝かしい活躍をしているのにも関わらず、器械運動は全くできず、保健でも50点しか点がとれない。だから、2段階目の評価とする場合があります。
気持ちはわかるのですが、成績が一部だけ非常に良くて、全体的には悪いというのは、親から考えたらよくわかりません。子どもにとっても、わかりにくいです。
それならば、成績は2段階目にしておき、通知表所見欄には、別のことを書きましょう。
複数ある項目の文末を同じにしない
これは、慣れてきたころに起こりがちな現象ですが、気づかない内に文末表現が同じになってしまってしまいます。同じような文末表現ですと、やはり考えて書かれてないなとがっかりさせてしまいます。
まずは、文末を引き出しとしてたくさん持っておくことと、同じ表現委なってないかを確認しましょう。
「できました」「しました」の違い
「できる」、「できない」とは、可能であったか、不可能であったか能力面を評価する言葉です。
「した」「しなかった」の行為の有無の言葉とごちゃごちゃになってしまいます。
例えば、
これは、技能面なので、文章として正しいです。
次の例はいかがでしょう。
この文章は、一見おかしくない文章に見えますが、不自然です。次の文と比べてみましょう。
後者の方がより適切です。協力する能力という解釈で前者の言葉を選ぶのであれば、良い気がするのですが、後者のように省いても十分意味が伝わるならば、削った方が自然です。
協力する能力が備わっているのは教師に評価されなくても、親はわかっていますよね。
マイナス面は書かない
所見項目でマイナス面を書くと、子どもと保護者から担任が嫌われてしまいます。これは、担任の先生にとっては関係づくりとしてはマイナスです。
子どもや保護者にとって、担任の先生は切っても切り離せない大事な存在です。やっぱりほめてもらいたいものです。
すこしチクッといいたい子どもがいるのはわかりますが、あえてその子の将来のためにマイナス面は書かずに良いところを見つけましょう。
もちろん信頼関係が十分構築されており、指導が回収される見通しがあるのであれば、書いても構わないです。ただ、高度なテクニックですので、勝算が無い場合はやめておきましょう。
その他 「公用文の書き方」
ほかにも、
「活かす」を「生かす」、「素晴らしい」を「すばらしい」と書いた方良い。
などと書く例を、下のURLで文化庁が丁寧に解説しています。是非ご覧になってください。
「こうしなさい。」と書いているのではなく、「こうしたらより公文書が伝わりますよ。」という意味で書かれています。一読すると、何か気づきがあるかも知れませんね。
さらに詳しく知っておきたい方は、次の資料をもっておいても損はないでしょう。
まとめ
今日は、通知表所見の書き方でした。
子ども達や保護者、先生方にとって良い所見になるといいですね。それでは。
補足
通知表所見のさらに詳しい文章を参考にされたい方は、次の書籍「どの子も輝く!」シリーズのご購入をおすすめします。読まれるだけで、表現が豊かになるのではないでしょうか。ご参考までに。